FPS上達論の前に、まずFPSのサウンド論を書かせて頂きます
まずこの辺について解説、ついでに私見を話しておけば、今後のレビューなどもスムーズにいくと思います
壮大なテーマですが、はりきっていきましょう!
バーチャルサラウンドとヘッドセット
FPSを始めて少し経つと、足音をよく聞きたい!! と思うようになる
そこで調べると、ヘッドセットというものがいいらしいと気づき、ヘッドセットには必ず7.1chサラウンドという機能がついていることがわかる
そして説明を読んでみると、7.1chサラウンド機能は、音を前後左右から出して音の方向をわかりやすくする技術であると書いてある
音を前後左右から出すんだから、FPSとの相性もよさそうだ
おすすめヘッドセットで調べても、サラウンド対応のものを選ぼう! というブログが多いものだから、サラウンドってのはFPSにおいて必須なんだなと思う
さて、これは本当だろうか???
一緒に考えていこう
そもそも、人間は音をどう聞いているのか
我々はそもそもどうやって音の距離や方向を特定しているのだろうか
一般的には、音が右耳と左耳に入る時の時間差と音量差、そして音が耳や顔や頭にぶつかったときの響き方の違いを無意識に感じ取って、経験的に判断していると言われている(どうやら人間の耳には特定の周波数をカットする役割があるようだ)
この、音が耳や顔や頭にぶつかったときに感じる音の変化を表現したものを、頭部伝達関数(HRTF)という
個々人によって体の構造は異なるから、HRTFは人それぞれによって違う関数になる
HRTFはこれからも使うキーワードになってくるから、覚えておいてほしい
例えば自分の右後方から音が鳴ったときは、まず右耳が音をキャッチし、少し遅れて左耳がキャッチ、そして体や耳を伝ってくる周波数が後ろの成分だから、右後ろと判断できるというわけだ
現実の音なら、これで問題がない
しかし、我々が相手にしなければいけないのはゲームだ
当然ながら現実の音ではないから、音を聞く方法も変わってくる
まずは基本的な知識を知っておかないと先に進めないから、少しずつ学んでいこう
※余談:私には片耳しか聞こえない友人がいるが、片耳だけでも音の方向を把握することはできているようだ
モノラル、ステレオ、サラウンド
ゲームに限らず、録音した音を聞く場合は、人間に向けて音を出力しないといけない
その時に使う音の出力機器が、スピーカーだ
スピーカーをどのように配置するかで、音の聞こえ方が決まってくる
大きくモノラル、ステレオ、サラウンドの3つがあるから、それぞれ解説していこう
モノラル
まずは、モノラルだ
モノラルは、一つのスピーカーを配置する方法
一つだから、まあ普通の音として聞こえてくる
ステレオ
次はステレオだ
これは、二つのスピーカーを設置する方法
モノラルと違い右と左で違う音を鳴らせるから、その表現力は爆発的に向上し、より細かいニュアンスや 音の位置なども表現できるようになる
ヘッドホンやイヤホンも、スピーカーを頭の横に二つ置いたものと考えていいから、ステレオだ
基本的に音楽やテレビの音等はステレオで録音されているから、右と左で違う音が鳴る
実際に音楽のファイルを見てみると、右用と左用に、データが二つあり、それぞれが異なっていることがわかる
一般用途としてはステレオが一般的だが、ここから更に進んだ方式もある
サラウンド
ステレオはスピーカーを二つ並べる方式だったが、ここからさらにスピーカーの数を増やした方式をサラウンドという
スピーカーを5つと低音を増幅させる為のスピーカー(サブウーファー)を1つ並べたものを、5.1chサラウンドといい
スピーカーを7つと、サブウーファーを1つ並べたものを、7.1chサラウンドという
更に、天井にスピーカーを2つとりつけて7.1.2とする方法もある
この小数点はスピーカーの種類を表しているから、ステレオは2chということになる(サブウーファーを足して2.1chで再生する機器もある)
サラウンドに関してだが、スピーカーの数が増えた分、ステレオに比べると圧倒的に音の臨場感が違う
本当に音が後ろから聞こえるから、映画などを見ていると思わず振り返ってしまうほどだ
ここで注意なのは、サラウンド環境で再生する為には、当然ながら
①サラウンドに対応したスピーカー環境
②サラウンドで録音された音声
③サラウンドで再生可能な出力形式
この3つが必要になってくる
これに対応している素材というのは、一部のライブ映像や映画などかなり限られているから、手を出して満足できるのは一部の人だけだろう
せっかく7.1chサラウンドのスピーカー環境を構築しても、音源がYouTubeのステレオなら前方二つのスピーカーから音が出るだけだ
ヘッドセットの7.1chサラウンドとは何か?
さてここで問題になってくるのは、よくヘッドセットに書いてある7.1chサラウンドとは何かということだ
さっきも確認した通り、サラウンドとはスピーカーを自分の体を囲むように複数設置して初めて完成するが、ヘッドセットにはスピーカーが二つしかないからステレオ再生しかできない
だから、物理的にサラウンドを再現できるわけがない
では、ヘッドセットに書かれているサラウンドとは何だろうか
ヘッドセットに書いてあるサラウンドとは、仮想的にサラウンドを表現した技術=バーチャルサラウンドのこと
先ほども言った通り、サラウンド環境を構築する為には大量のスピーカーを置く必要があるが、はっきり言ってそんな環境を作るのは現実的ではない
金もかかるし、だいいちうるさい
じゃあどうにかして2つのスピーカー(ヘッドホンやイヤホンも含む)でサラウンドを再現しよう、と開発された技術が、バーチャルサラウンドだ
7.1chバーチャルサラウンドは、7+1つのスピーカーを実際に部屋に配置したと想定して、そこから生み出される音の表現を再現しようとする
人間は現実の音を左右の耳の時間差や音量差、体を伝わったときの音の変化=HRTFで判断しているといったが、それを左右の音量バランスの変化、音の遅延やイコライジングによって表現しようぜというのがバーチャルサラウンドというわけだ
スピーカーを置いてサラウンドを再生していると想定して、それを再現する
まさにバーチャル(仮想的な)サラウンドというわけだ
実際にサラウンド音声をバーチャルサラウンドで出力すると、確かに一定の定位はあるように感じられるし、後述するが確実に音の情報として前後が存在していることは間違いない
ちなみに、一般的なサラウンドをバーチャルサラウンドと区別して、リアルサラウンドという場合もある
補足しておくと、実はリアルサラウンドに対応したヘッドセットも存在する
RazerのTiamat 7.1が代表格だ
私も当然試したことがあるが、環境を構築するのがそれなりに面倒だし、私としては音質の悪さのほうが気になった
最近のモデルは改善しているのかもしれないが、わざわざ試す気にはならない
怖いもの見たさで試してみるのもいいだろう
バーチャルサラウンド対応ヘッドセットなんてものはない
勘違いしている人が時々いるから、一応解説しておく
バーチャルサラウンドはステレオ再生できる機器であれば、ヘッドホンだろうがイヤホンだろうが再現できる
ヘッドセットは所詮ヘッドホンにマイクをつけただけのものだから、当然性質はヘッドホンと同じステレオだ
穴は二つしかない
だから、サラウンド対応ヘッドセットなんてものは存在しない
商品のタイトルに7.1ch対応と書いてあるのは、ヘッドセットの付属品にバーチャルサラウンド効果を持つUSBボックスなどが付属しているからだ
だから、バーチャルサラウンドを使いたいのなら、別途アンプやDACを買って好きなヘッドホンやヘッドセットを使えばそれでいいことになる
さて、ここまでで、ステレオやサラウンドが何であるかについては十分ご理解いただけたと思う
ここまでは事前知識、ここからが本題だ
FPSにおいてバーチャルサラウンドは有効なのか
バーチャルサラウンドすごいじゃん! と思われた方もいるかもしれないが、少し考えてみよう
先ほど、サラウンドを再現する為に必要なものは3つだと述べた
おさらいしよう
①サラウンドに対応したスピーカー環境
②サラウンドで録音された音声
③サラウンドで再生可能な出力形式
この3つだ
このうち、どれか一つでも欠けるとサラウンドにはならない
FPSについて考えよう
①サラウンドに対応したスピーカー環境、これはバーチャルサラウンドの技術で疑似的なスピーカーを想定することで解決できる
②のサラウンドで録音された音声だが、これもクリアできていると考えていい
自分はゲームの開発者ではないので完全なところはわからないが、調べたところ、ほとんどの3Dゲームでは、音を発する物体に移動情報を含むデータを持たせているそうだ
FPSもおそらくそのように作られていると考えられるから、サラウンドなどは目じゃない音の情報量を持っているはずだ
つまり、②もクリア
問題は、③サラウンドで再生可能な出力形式だ
端的に言おう
現状CS:GOやオーバーウォッチ等を除いて、サラウンド出力に対応しているFPSはほとんどない
つまり、ほとんどがステレオ出力しか持たない
みんな大好きPUBGも、ステレオだ
http://pubg.dmm.com/faq/detail/696?category=all
ステレオの情報しかないものをサラウンドで再生するとどうなるか
そう、二つのスピーカーからしか出力されない
FPSにおいてバーチャルサラウンドを使用したところで、サラウンドにはなっていないのだ
実際にLogicoolのソフトを使って調べたところ、むしろほとんどのゲームが5chの情報を持っていることがわかった
PUBGも公式がステレオにしか対応していないと言っていたが、実際には前後情報は持っていた
最近のHRTF演算を導入しているゲームのほとんどは、5chの情報を持っているのだと思う(後述)
FPSのサウンドは、ステレオに最適化されている
サラウンドソースの音源を2chステレオスピーカーで再生できるようにすることをダウンミックスというが、
ほとんどのFPSは、ステレオでの再生を想定して、音と移動情報をダウンミックスして出力している
つまり、本来はステレオでも十分音の方向がわかるように出力されてきているということだ
ステレオソースの音源に対しバーチャルサラウンド加工をかぶせるということは、一度整って出てきたものに無駄な音の加工を加えているだけにすぎないから、割と運営の努力を無駄にしている行為ではある
追記:最近のゲーム、例えばPUBGなんかは最初からバーチャルサラウンドと似た効果を持つHRTF演算が導入されている。(銃声に関しては選択可能)
本当に5.1chを受けてダウンミックスできているのか
そもそもの疑問として、巷のバーチャルサラウンドをうたう製品の中で、5.1chの出力を本当の意味で受けてダウンミックスできる製品がどれだけあるのかという問題がある
GSX1000は間違いなくできているが、他の製品は調べてもいまいち確信が持てない
よく「俺の耳では間違いなく後ろから聞こえる」という人がいるが、何度もいうように個人の主観はあてにならない
ちなみに、フリーソフトでバーチャルサラウンドを再現できるソフトもあるから、気になる人は調べてみるといい
超私見:私がバーチャルサラウンドを使わない理由
ここからは完全に私見になるので、話半分で聞いてほしい
音の好みというのはHRTFと同じように完全に個人差があるから、私がこう言っているからといって正しいわけではない
私はFPSにおいてバーチャルサラウンドは一切不要であると考えている
なぜなら、バーチャルサラウンドはその仕様上、音が聞き取りにくくなるからだ
さきほど左右に届く音の遅延等によってHRTFを表現する(逆かもしれない)といったが、左右の音量差は方向の特定において最も重要な情報になるものだ
それをバーチャルサラウンドによって曖昧にしてしまうことによって、方向を瞬時に把握しにくくなる(と私は感じる)
更に遅延を表現する為には、音場(音が鳴る空間)を広げ低音域をブーストする必要がある
FPSにおいて過度な低域は音のぼやけにつながり、足音や銃声を聞き分ける際に明らかにノイズになる
また、音場の広がりは敵との距離感の把握に悪影響を及ぼすと考えている
もし仮に音の定位が100倍正確になったとしても、私は絶対に使わない
そもそも今までのFPS人生で音関係で困ったことがないから (音の傾向を把握する時期を除く) 、これ以上の定位の向上はやる必要がないというか無理だし、
FPSにおいてはできるだけ無駄な音を排除し、爆発音の中のリロード音や、僅かな着地音を聞き取ることのほうが圧倒的に重要だからだ
実際に私もバーチャルサラウンドをうたう製品は未だに全部試してはいるが、どれもこれもあえて使うメリットを一切感じない
しいて言えば、GSX1000は比較的ぼやけが少なく、リアかフロントどちらかの音量を増すという設定ができるから、それは人によっては有用だと思うし、実際に使うとなかなか優れものだと感じるが、音が聞こえにくくなるデメリットに比べるとわざわざ使う意味はないと感じる
最近巷ではGSX1000のサラウンドを使うことが推奨されつつあるが、使っている人が本当にメリットとデメリットについて理解しているのかは謎だ
とはいえ実際に使っている人が多いから、左右の音のバランスが調整されたり、一部の音が強調されることによって聞き取りやすさが向上しているのだろう
決してその人達のことを批判しているわけではない
デメリットをきちんと把握した上で、その設定が自分に合っていると感じるならそれはそれでありだと思うし、もし私も合致しているなら使っていたと思う
最後に
さて、今回はなかなか長編になった
ここまで付き合っていただいて感謝する
参考になったと思ったら、ぜひお友達にも教えてほしい
また、自分も専門家ではないので、間違っているところもあるかもしれない
何か間違っているところがあれば、ぜひ教えていただきたい
それではまたいつか、お会いましょう(=^・^=)
参考:https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20170906078/
↑この4gamerさんの記事を見るだけでも、かなりサラウンドなどについて理解が進むから、ぜひ読んでほしいです。正直4割くらいしかわからなかった。
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